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倒錯

命を感じる
 脈打つ象徴
 骨の髄まで
 馴染む煩悩

互いの上辺を褒め称え
 卑しい本音を覗かせる
 嗚呼とても生きている
 世間と疎み合う二人が

     祭の後には
      木偶と抜作
      我に返れど
      俗とは地獄

互いに温度を分け与え
 虚しい浄化を夢に見る
 嗚呼とても生きている
 自身と睨み合う合間に

踵を返す人
 善の顔ばせ

過量服薬だという、呆気ない孤独の終焉
 偶然にまで愛されて貴方は闇に帰りゆく

吐きそうな喧騒でも今は一人で歩けそう
 他人という障害物が温度を無くした隙に

過量服薬だという、味気ない夢幻の終極
 真赤な水を飲干して貴方は闇を謳歌する

吐きそうな後悔なら今は一人で持余そう
 他人という障害物が夜叉の面になる前に

情動

熱り立つ純情     殴るも抱くも丁度良い
 余すことなく開放   縛るも解くも他人次第
 そう刹那的な百獣の王 一度開けば閉まらぬ物体
 萎れ逝く情操     好きに挿げ替えたらいい
 御破算になる騒動   好きに着せ替えたらいい
 もう抒情的な尋常の人 費やされる野暮と色気を

α

会釈も出来ぬ人々の 堵列 のべつに徒歩き 
 散華の雨が舌の根と 霞む行路にじくじくと 

箸にも棒にも掛からぬ 独歩 負ければ賊軍と
 朽廃の祖のなりかたち また萌え出よと雨乞を

推定無題

長い月日は徒に
 帰れぬ場所を綾なして
 何も答えぬ墓石に
 捧ぐ祈りを残すだけ
 されど迎える寂しさに
 行きつ戻りつ塩屋崎
 歌碑から流る一節に
 帰らぬ人の詩を聞く