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枳殻の人

路傍の石礫は縺れ合い
 昔日の空想を思い出す
 後出し石拳で言葉遊び
 繰返し盲目は空を見る

道行く人 その執着の根源に
      空似が居れば儚い
 平伏す人 天道様が照らす先
      仮初め在れば幸い

枳穀という宿痾により
 地を見て空を説く滔々
 摩耗する侘しさの絡繰
 地に落ち虚の餌となる

男女関係

縁があれば色情狂「空の箱なら手前で隙間なく埋め尽くそう」
 縁とすれば贖罪羊「貴方の手に掛り剥製にされたく存じます」

暗夜の樹海は無貌と偶像 端から振り翳す白旗
 流浪に為るなら翻り共謀 個人にのみ係る主語
 妥協の甘味で正負も均衡 二人羽織になる寝室
 根深い因果を焚上げ深層 鴎は鴎という不文律

閑話休題

通りすがる個の無表情
 見え透く街と霞む昨日
 思案する暇を育てよう
 覚えのある臭いだろう

立ちどまる度に走馬灯
 生え抜く芝の青い模様
 真綿で緩く締上げよう
 覚えのある臭いだろう

幻日 頭上より取繕う
 翳す 矢羽の這い蹲う
 人差し指を舐り掲げよ
 未だそこに在るのだと

柘榴の花

最果てに物言わぬ残骸でも
 手向く思慕は糜爛の花びら
 得も言われぬ香しき現世を
 あの世になどと遣るものか

蝶よ花よと見よう見まねで 嫌よ嫌よも好きのうちだと
 手ぐすねを引く手に束の飴 まじないを唱えては花の雨
 身を滅ぼすほど下さいなと 薄皮一枚剥いでしまえよと
 味のない紅を舌舐めずりで 身が震えるような舌三寸で
 一服するように頬張る愛憎 添遂げるように頬染む純情
 麻を絹と褒めそやす声音が 石を玉と撫で上げる所作が
 所在なさげに揺らごうとも 有象無象の代わりとしても
 手遊みに興じる今こそ生命 手遊みに殉じる今こそ生命

青の信号

黄色く縛られた今更は
 殺し文句を吐きながら
 尤もらしい理由で化粧して給う躊躇い
 誰の何の受売りで均されて笑う戸惑い
 行く宛を尋ねようにも

黄色く縛られた今更は
 殺し方すら分からずに
 馬の骨に気圧され零になり適う彷徨い
 綺麗事を網羅して八方塞がる果敢ない
 その先をいくら想えど