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境界

冬の神戸の寒く不夜城の誘蛾灯
 詰の甘さを嘆く蹌踉の行く末と

暖簾に呑まれる肩寄せる酩酊と歩き煙草の青年 ここはどこの細道か
 俯瞰で見惚れる無機質な立体と人工島の連なる 居留地からの夜景か

真顔で掛け直す三宮に至る往来
 散文の留守電に重複る車の煩い

さよなら告げて遠く見る長旅の原初に似た風景 ここはどこの細道か
 揺られ揺られて遠ざかる目的と利己主義の投影 素知らぬ顔で白い朝
                       二度と騒がぬ黒い板