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空想

君の美学に残す書置き 黒い車窓に映る形無し
 緩めに閉じて足と詳細 迷わず降りて渋谷方面

広い歩道と狭い歩幅の 番う対比に泳ぐ眼差し
 財布も閉じて物見遊山 流れに乗じて神宮前へ

街宣車と香子蘭の歌に 雑踏混ざり反復する道
 既視感彩る汗と靴擦れ
 迷わず降りて表参道駅 迷わず進む代々木八幡 騒音の傍で茂る樹木に
            立てば芍薬座れば牡丹 百合の寓話に耽る思惑

           水を差しては芽時枯時 違える穂先に粋と仮初
            大義に生きて叢に帰す 等と大映染みた大袈裟

           否、君とは箱庭に落ち 安果物の桑格莉亞飲む
            今も知らぬ茫漠な部屋
            白い理想に向く太子堂 黒い車窓は直ぐ大手町
                       終りを告げる乗換案内
                       北の旅路は間引く街並
                       人もこころも蘖に為り