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形而下の不全

天井から不愉快に垂れ下がる 視・壁に彫られたポエム
 糸目の啜ろふ愉快な嗜好だと 聴・砕け散るデカダンス
 この部屋に犇めき刻む律動の 嗅・嘔吐する翡翠血漿
 三白眼閉づるビスマスの夢と 味・記憶をねぶる柑橘類
 目・N/A           触・欺瞞の蔓延る無菌室
 耳・無様な生様、貴様の 至極当然に横たわる日常の下
 鼻・擬態の実態、生態と 見下ろす人へ醜悪な造形美を
 舌・野望の展望、欲望を 徒に拒む姿勢こそ超現実主義
 膚・不全な健全、完全と 澱む眼窩にポロニウムの愛を

算段

現実で息絶えたものが四次元的に蘇る
 他人の介入を許さぬ何か息衝いている
 虚無と名付ける人は遥か外縁にて連綿
 パンドラの箱、或は中心に眠る貴方を
 見下ろす私は天国の一片とも言えよう
 物理的に介入出来ぬ悲しさ濃霧の縒り
 晴らす意味なしと弛む蜘蛛の糸、燼し
 カサンドラ、或は流刑地で眠る貴方の
 見渡すその先深淵の一片とも言えよう
 然もあらばあれ、愛を語らおう、この
 入れ物が朽ちても尚、対話を続けよう
 遍くもの我らの外から中から繰り返し
 虚無と名付ける人の清か近傍から甘言
 パンドラの箱、或は無常に凭る貴方を
 見下ろす私は貴方の一片とも言えよう

誘発

序幕 子を成す為ではなく欲、満たすため膨らむ
    それを性とか言うから似非の三段論法です
    心は明で、体は暗で、序でに酒タバコ賭博
    金に為らぬ趣味に興じる大人の子供達です
    子を成す為ではなく欲、埋めるため広がる
    好き者なんて言うけど初心な博愛主義です
    心は暗で、体は明で、序でに政治宗教野球
    見世物小屋で手首を切る内なる子供達です

喝采 下品な野望に袖通し殺した記憶を尚も蹴る
    彼方の匿名 家族の騒然 綺麗事は侮辱です
    理性も知性も感じない瞬間こそ愛してるの
    彼方の空白 減価償却 安易に塗り潰せます
    勝てば官軍の正義 法の網を掻い潜り
    情緒的に科学して 飼い殺す箱庭内で

選別 廃病院のベッド上 人体模型の腸撫でる
    生臭いアニメーション 罪に問えますか
    或は理路整然とした著名な書籍の中で
    暗く重い理想に恋し耽美にくたばる人
    若しくは意図を全く読み取れない畜生
    又は大味な誇張を重ねる狐狸の君主論
    多様な病変、私含め右顧左眄な邪です

秩序

歌しか知らぬ玉姫様の所在を探して三千万里
 二週間を経て出生届に御印黒く百舌鳥の早贄
 避妊具破り多産の虫は役目に基づき子孫繁栄
 越ては為らぬ境界線を説く人の目に最奥の闇

次元を超える玉虫色の舌切落として雀の御宿
 輪廻・転生・円環そして今を生抜く海千山千
 皮脂膜糸繰り御蚕様の布帛を纏いて擬態生態
 越ては為らぬ境界線を説く人もまた塞翁が馬

お変りないですか、お元気そうで何よりです

電車乗り継ぎ高天原へ俄の願いを叶えて鷽鳥
 重ね渡り振り上げ迷い舐り合せて記憶の錬成
 蝶が羽搏きゃ竜巻起り因果の誤謬で疑念偏見
 越ては為らぬ境界線を説く人食い馬にも合口

電車乗り継ぎ鶯谷へ老頭児の夢を乗せて偽娘
 東場土壇場門断平に裏ドラ重なり親を捲って
 だのに家畜の御蚕様は飯も食えずに子孫繁栄
 越ては為らぬ境界線を説く勝手、秩序の好色

愛情

無関心という仮釈放 手垢付く君の肖像
 六弦琴木霊す独居房 母様空が綺麗です
 娑婆の空気には軽装 買い叩く君の同情
 尻の穴から奥歯まで 父様僕は節穴です

興味引く一人芝居と 牽引する空の興業
 薄ら寒いな異質だと 常識振る建前です
 塞がる切創の凹凸を 撫で回す指の焦燥
 薄ら寒いが普通だと 素面戻れば終です

鉄砲を投捨てて逃走 散らばる君のBB弾
 全身の黒子の数だけ 疣は手術で除き〼
 鉄砲を頬張って抗争 早打の君の白い弾
 東京湾に沈めた分だけ 同じ穴の狢です

保守的という処世術 無理来す君の葛藤
 刑務所上りの口上と 桜桃食らう歪です
 無関心という仮釈放 手垢付く君の肖像
 六弦琴木霊す独居房 母様空が綺麗です

凡人

事象の地平線 早急に雌雄の定年
 混雑の埼京線 冤罪を訴訟し青年
 電子の匿名性 凡そ妄想の可能性
 雑多な多様性 阿呆の豚で可燃性

窓掛なき隣人 挨拶要らない丁寧
 気配消す老人 対人距離で煽り合
 目隠しの隣人 気遣い後漁夫の利
 気配消す若人 四光年の車間距離

傍ら赤色矮星 理論上生存可能圏
 関係無い僕等 雑居の片隅で昇天
 脱法の芳香剤 往復して宇宙旅行
 数十年後未来 仮想世界の開拓者

放浪する隣人 終活要らない提携
 気配断つ老練 一人で曾根崎心中
 能天気な隣人 高過ぎる理想捨て
 気配出す新参 八光分の距離感で
 姿眩ます若人 末代まで語り継げ